理事長挨拶

作成日:2016.09.27

更新日:2018.06.26

理事長就任のご挨拶

写真「理事長:細井創」

平成30年(2018年)6月17日付で、日本小児血液・がん学会理事長に就任させていただきました細井 創(ほそい はじめ)です。

日本小児血液・がん学会は、1960年に設立された日本小児血液学会と1985年に研究会として発足した日本小児がん学会が、2011年に合併して組織された、小児の血液疾患とがんの医療の向上に寄与することを目的とした学術団体(一般社団法人)です。

会員数は、医師、メディカルスタッフを中心に2千名を超えます。合併以来、石井榮一先生、堀部敬三先生、檜山英三先生が、それぞれ初代、2代、3代理事長として、会員の皆さんとともに本学会の礎を築かれ、発展させて来られました。この成果を引き継ぎ、本学会をさらに融合・発展させていくべく、他関連団体との交流・連携を深めつつ、以下の3つの精神で取り組んでいきたいと思います。会員の皆さんの叡智を結集し、がんや血液疾患の子どもとそのご家族のために、また、次世代を担う若手医師・研究者のために、会員一同心を一つにして取り組んでいければと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

1.For Othersの精神

私が留学していた米国セントジュード小児研究病院の設立者、俳優のダニー・トーマスは、以下のような言葉を残しています。

"All of us are born for a reason, but all of us don't discover why. Success in life has nothing to do with what you gain in life or accomplish for yourself. It's what you do for others."

彼は「我々は皆、理由があってこの世に生まれてきているが、必ずしも皆がその理由を見出しているわけではない。人生の成功というものは、その人がその人生で何を得たかとか、自分自身のために何を達成したとかいうこととは無関係である。人生の成功とは、その人が他者に対して何をしたかによるのである。」と言っています。本学会では、このothersに、病気の子どもたちとそのご家族、学生たち、研修医や研修生、そして我々学会員自身をあてはめ、当該研究と医療の進歩・発展および社会への啓発を推し進めていきたいと思います。

2.平等の精神

「人は皆平等である」とはよく言われるところですが、現実は決してそうは見えません。頭脳や運動、芸術などの才能や能力は大きな差があるように見えます。生まれ育つ環境も平等に与えられているとは考えられません。一生たいした病気一つしないような人もいれば、一人で、あるいは家族で次から次へと重い病気にかかっていくような人もいます。「どこがいったい平等なんだい?世の中、不公平ばかりじゃないか!」と憤慨したくなることも少なくありません。

それでもあえて私は、人は皆平等である、と言いたいと思います。なぜなら、「人が皆平等」なのは、病気を例とれば、病気になったとき、治りたいと願う気持ち、治ろうと努力して良くなったとき感じる喜び、良くなって家族で暮らせたとき感じる幸せ、それらこそが皆平等に与えられているということだと思うからです。そして、われわれの仕事は、そういう子どもや家族の願いに、平等に応えていくことだと思うからです。

3.Children Firstの精神

2018年11月の第60回日本小児血液・がん学会学術集会のテーマは「Children First! 難病の子どもたちが教えてくれる未来の医療、未来の社会」とさせていただきました。チルドレン・ファースト、それは単に「とにかく何でもいつでも、子ども最優先」と言う意味ばかりではなく、「子どもの医療や教育のあり方を通して、医療や社会のあり方を考えていくことが、将来のすべての医療やよりよい社会づくりにつながる」というメッセージを込めています。

「少子超高齢化時代」と盛んに叫ばれ、世の中では高齢者への対応に大きな関心が払われ、対策に多くの予算がつぎ込まれていますが、やがて大人になる子どもや子どもを産み育てる親への対応や対策に投資しなければ、いつまでもより良い未来は来ません。明るい展望のない、「終末に向かう事後対応」に終始することにもなりかねません。

一生の間に2人に1人はかかるという成人のがんに比べ、小児がんは、わが国で年間2,000人~2,500人程度の発生数で、15歳未満の小児年齢対応の発生率でも1万に1人程度の希少疾患です。しかし、小児がんは、現在もわが国の子どもの死因の第1位を占める疾患、子どもの命を脅かす「難病」なのです。難病中でも「究極の難病」の代表の一つである小児がんや血液疾患に対する基礎研究、それを応用した多診療科・多職種による集学的治療や家族・教育者・行政など社会全体を巻き込んだトータルケア、医療や医療的ケア、また治療終了後も含めた保健、予防を中心とした地域づくり・町づくりは、「小児」や「がん」に限らず、すべての医療や保健、福祉、そして未来のより良い社会づくりの原点と考えます。

「世の光のあたらないところに光を」とは、私が医師を目指して勉強や研修をしていたころの思いでしたが、最近は「これは少し思い上がりであった」と思うようになりました。実は、病気や障がいをもった子どもたちこそが、我々が進むべき道を示してくれている道標(みちしるべ)、真摯に向き合うことで、我々をより良い未来に導いてくれる光そのものだと気づいたからです。

決して容易な道のりではないかもしれません。しかし、難病の子どもたちとその家族が、これまでそうして来られたように、また現在もそうされているように、その研究と医療に携わる我々も、困難と立ち向かい、闘い、苦難を乗り越えて、より良い、明るい未来に向け、役割を果たしていきたいと思います。われわれ日本小児血液・がん学会の活動にご理解とご支援をどうぞよろしくお願い申しあげます。

日本小児血液・がん学会
理事長 細 井 創
(京都府立医科大学大学院医学研究科 小児科学)