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学会概要

利益相反指針・細則

作成日:2013.06.05

小児血液・がん領域での医学研究の利益相反に関する指針

日本小児血液・がん学会

序文

 日本小児血液・がん学会(以後「学会」という)は会員に対する教育活動、会員による研究成果の発表、市民への啓発活動などを通じて、我が国の小児がんおよび血液疾患の予防・診断・治療の向上を図り、広く公共の福祉に貢献することを目的として活動している。学会員の多くは、小児がん患者を対象とした標準的治療法確立のための臨床研究をはじめとして、新規の医薬品・医療機器・技術を用いた研究などさまざまな医学研究を推進しているが、これらの中には産学連携によって研究や開発が行われているものも少なくない。

 我が国では、科学技術創造立国をめざした取り組みの一環として産学連携活動が推進されている。科学技術の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために「科学技術基本計画」が1996年に策定され、以後、我が国の科学技術政策の根幹を成す考え方として「第二期科学技術基本計画」(2001年)が策定され、さらに2006年を初年度とする「第三期科学技術基本計画」が策定された。このように科学技術創造立国をめざした様々な取り組みが国家戦略として進められているなか、産学の連携活動がより一層強化され、科学技術の発展に大きな成果を果たすようになってきた。

 しかし、産学連携による医学研究では、学術的・倫理的責任を果たすことによって得られる成果の社会への還元(公的利益)だけではなく、産学連携に伴い取得する金銭・地位・利権など(私的利益)が発生する場合がある。そして、これら二つの利益が研究者個人の中に生じる状態を利益相反(conflict of interest: COI)と呼ぶ。具体的には、外部との経済的な利益関係によって公的研究で必要とされる公正かつ適正な判断が損なわれる、又は損なわれるのではないかと第三者から懸念が表明されかねない事態をいう。利益相反状態が深刻となり公正かつ適正な判断が妨げられた場合には、医学研究における研究方法やデータ解析あるいは結果の解釈が歪められるなどの状況や、あるいは適切な研究方法から得られた信頼性の高い研究結果であるにもかかわらず公正な評価が得られないなどの状況が生じる可能性がある。

 欧米では、産学連携による医学研究の適正な推進や学会発表での公明性確保のために、すでに多くの学会が医学研究における利益相反の管理指針を策定している。米国では、2010年に成立した医療保険改革法のSunshine条項のなかで、製薬・医療器具関連の企業は医師、医療機関などへの支払いをすべて開示することを法的に義務づけた(2013年からWeb上での公開を実施)。我が国では、2008年に「厚生労働科学研究における利益相反の管理に関する指針」が策定され、公的研究の透明性を確保するために研究者と利害関係が想定される企業との利益相反についての管理指針が示された。このような状況をふまえて、2011年2月に日本医学会による「医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」が公表された。そこでは、日本医学会各分科会が置かれているそれぞれの状況に応じた医学研究にかかる利益相反指針およびその細則などの策定における基本的な考え方が示されている。

Ⅰ.目的

 本学会は、その活動において社会的責任と高度な倫理性が要求されていることを重く受け止めるとともに、会員による医学研究を積極的に推進することが重要であると考え、「小児血液・がん領域での医学研究における利益相反に関する指針」(以下、「指針」という)をここに策定する。その目的は、会員に対して利益相反に関する指針を明確に示し、学会が会員の利益相反状態を適切に管理することにより、産学連携による研究・開発の公正性を確保した上で、研究成果の発表やそれらの普及・啓発活動を中立性と公明性を維持した状態で適正に推進させ、小児がんおよび血液疾患の予防・診断・治療の進歩に寄与することにより学会ならびに会員が社会的貢献を果たせるようにすることにある。

Ⅱ.対象者

 利益相反状態が生じる可能性のある以下の者に対し、本指針が適用される。

  • ① 本学会会員
  • ② 本学会の学術集会、教育セミナーなどで発表する者
  • ③ 常設委員会、理事長諮問委員会、疾患委員会の委員長および委員(オブザーバーを含む)、学術集会のプログラム委員など
  • ④ 本学会の事務職員
  • ⑤ ①?③の対象者と収入・財産を共有する者

Ⅲ.対象となる活動

 本学会が行うすべての事業活動に対して本指針を適用する。

  • ① 学術集会、教育セミナーなどの開催
  • ② 学会雑誌、学術図書などの発行
  • ③ 研究および調査の実施
  • ④ 研究の奨励および研究業績の表彰
  • ⑤ 認定医(小児血液がん専門医、小児がん認定外科医、など)および専門医研修施設の認定
  • ⑥ 生涯学習活動の推進
  • ⑦ 関連学術団体との連絡および協力
  • ⑧ 国際的な研究協力の推進
  • ⑨ その他目的を達成するために必要な事業

特に、下記の活動を行う場合には、特段の指針遵守が求められる。

  • 1)本学会が主催する学術集会、教育セミナーなどでの発表
  • 2)学会雑誌などの刊行物での発表
  • 3)診療ガイドラインの策定、保険収載申請、公知申請など
  • 4)臨時に設置される調査委員会、諮問委員会などでの作業

Ⅳ.申告すべき事項

 対象者は、個人における以下の①?⑨の事項で、細則で定める基準を超える場合には、その正確な状況を理事長に申告するものとする。なお、申告された内容の具体的な開示、公開の方法については別に細則で定める。

  • ① 企業・法人組織、営利を目的とする団体の役員、顧問職、社員などへの就任
  • ② 企業の株の保有
  • ③ 企業・法人組織、営利を目的とする団体からの特許権などの使用料
  • ④ 企業・法人組織、営利を目的とする団体から、会議の出席(発表)に対し、研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など)
  • ⑤ 企業・法人組織、営利を目的とする団体がパンフレットなどの執筆に対して支払った原稿料
  • ⑥ 企業・法人組織、営利を目的とする団体が提供する医学研究費(受託研究費、共同研究費など)
  • ⑦ 企業・法人組織、営利を目的とする団体が提供する奨学(奨励)寄付金
  • ⑧ 企業・法人組織、営利を目的とする団体がスポンサーとなる寄付講座
  • ⑨ その他、上記以外の旅費(学会参加など)や贈答品などの受領

Ⅴ.利益相反状態の回避

1.全ての研究者が回避すべきこと

 医学研究の結果の公表や診療ガイドライン・マニュアルなどの策定は、純粋に科学的な判断、あるいは公共の利益に基づいて行われるべきである。会員は、医学研究の結果を会議・論文などで発表する、あるいは発表しないという決定や、医学研究の結果とその解釈といった本質的な発表内容について、その医学研究の資金提供者・企業の恣意的な意図に影響されてはならず、また影響を避けられないような契約書を締結してはならない。

2.臨床研究の試験責任者が回避すべきこと

 臨床研究(臨床試験、治験、および前臨床試験を含む)の計画・実施に決定を持つ研究責任者(多施設共同臨床研究における各施設の責任医師は該当しない)は、次の利益相反状態となることを回避すべきである。

  • ① 臨床研究を依頼する企業の株の保有
  • ② 臨床研究の結果から得られる製品・技術の特許料・特許権の獲得
  • ③ 臨床研究を依頼する企業や営利を目的とした団体の役員、理事、顧問(無償の科学的な顧問は除く)

 ただし、研究者が①?③に該当する場合であっても、当該研究を計画・実行する上で必要不可欠な人材の場合には、その判断と措置の公平性、公正性および透明性が明確に担保されるかぎり、当該臨床研究の試験責任医師に就任することが可能である。

Ⅵ.実施方法

1.会員の責務

 会員は、医学研究の成果を学術集会等で発表する場合、当該研究実施に関わる利益相反状態を発表時に、本学会の細則にしたがい、所定の書式で適切に開示するものとする。研究などの発表との関係で、本指針に反するとの指摘がなされた場合には、理事会は利益相反委員会に審議を求め、その答申に基づき、妥当な措置方法を講ずる。

2.役員等の責務

 本学会の役員(理事長、副理事長、理事、監事)、学術集会会長(次期会長、次々期会長を含む)、委員会(常設委員会、理事長諮問委員会、疾患委員会)委員長および委員(オブザーバーを含む)は、学会に関わるすべての事業活動に対して重要な役割と責務を担っており、当該事業に関わる利益相反状態については、就任した時点で自己申告を行う義務を負うものとする。また、就任後、新たに利益相反状態が発生した場合には規定にしたがい、修正申告を行うものとする。

3.利益相反委員会の役割

 利益相反委員会は、本学会が行うすべての事業において、重大な利益相反状態が会員に生じた場合、あるいは、利益相反の自己申告が不適切で疑義があると指摘された場合、当該会員の利益相反状態を管理するためにヒアリングなどの調査を行い、その結果を理事長に答申する。

4.理事会の役割

 理事会は、役員などが本学会の事業を遂行するうえで、重大な利益相反状態が生じた場合、あるいは利益相反の自己申告が不適切であると認めた場合、利益相反委員会に諮問し、答申に基づいて改善措置などを指示することができる。

5.学術集会会長および教育セミナー等の担当責任者の役割

 学術集会会長および教育セミナー等の担当責任者は、全ての発表者に対して、本指針に沿った発表を行うことと、その発表に関連する利益相反状態の有無を開示することを求める。本指針に反する発表であることが事前に判明した場合は、発表を差し止めるなどの措置を講ずることができる。この場合には、速やかに発表予定者に理由を付してその旨を通知する。重大な利益相反状態が生じた場合、あるいは利益相反の自己申告が不適切であると認めた場合、担当責任者は利益相反委員会に諮問し、その答申に基づいて改善措置などを指示することができる。

6.編集委員会の役割

 編集委員会は、学会雑誌などの刊行物で研究成果の原著論文、総説、診療ガイドライン、編集記事、意見などが発表される場合、その実施が本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する場合には掲載を差し止めるなどの措置を講ずることができる。この場合、速やかに当該論文投稿者に理由を付してその旨を通知する。本指針に違反していたことが当該論文掲載後に判明した場合は、当該刊行物などに編集委員長名でその旨を公知することができる。なお、これらの措置の際に編集委員長は利益相反委員会に諮問し、その答申に基づいて改善措置などを指示することができる。

7.臨床研究倫理審査委員会の役割

 臨床研究倫理審査委員会は、提出された研究計画が本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する場合には、研究代表者に対して研究計画の修正を求めることができる。本指針に違反していたことが当該研究計画書承認後に判明した場合も、同様の対応を行うことができる。

8.倫理委員会の役割

 利益相反管理にかかる倫理委員会の役割は、理事長からの諮問を受けて、利益相反指針違反者に対する具体的な対応措置を違反内容や本学会への影響の度合いを考慮して判断し、決定することであり、理事長への答申がなされる。利益相反管理は、倫理性の高い対応であり、日常的に倫理委員会と利益相反委員会、編集委員会は産学連携による医学研究の適正な推進に関しては情報交換ならびに連携を行っておくことが求められる。

9.その他

 その他の委員長・委員は、それぞれが関与する学会事業に関して、その実施が本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する事態が生じた場合には、速やかに事態の改善策を検討する。なお、これらの対処については利益相反委員会に諮問し、答申に基づいて理事会は改善措置などを指示することができる。

Ⅶ.指針違反者への措置と説明責任

1.指針違反者に対する措置

 本学会理事会は、別に定める規則により、本指針に違反する行為に関して審議する権限を有しており、倫理委員会に諮問し、答申を得たうえで、理事会で審議した結果、重大な指針違反があると判断した場合には、その違反の程度に応じて一定期間、次の措置の全てまたは一部を講ずることができる。

  • ① 本学会が開催するすべての講演会での発表禁止
  • ② 本学会の刊行物への論文掲載禁止
  • ③ 本学会学術集会の会長就任禁止
  • ④ 本学会の理事会、委員会、作業部会への参加禁止
  • ⑤ 本学会の評議員の解任、あるいは評議員になることの禁止
  • ⑥ 本学会会員の資格停止、除名、あるいは入会の禁止

 指針違反者に対する措置が確定した場合、理事長へ情報提供を行うものとする。

2.不服の申立

 被措置者は、本学会に対し不服申立をすることができる。理事長は、これを受理した場合、速やかに不服申立て審査委員会(暫定諮問委員会)を設置して審査を委ね、その答申を理事会で協議したうえで、その結果を不服申立者に通知する。

3.説明責任

 本学会は、自らが関与する場所で発表された医学研究の成果について、重大な本指針の違反があると判断した場合は、直ちに理事会の協議を経て社会に対する説明責任を果たさねばならない。

Ⅷ.細則の制定

1.本指針を実際に運用するために必要な細則は別に定める。

2.細則は利益相反委員会で審議され、理事会の議を経て改廃することができる。

Ⅸ.施行日

 本指針は平成27年11月2日より施行する。